機械事業部 海外機械部

原口 明

Akira Haraguchi

海外営業・原口がたどり着いた海外で仕事をする「境地」

2021.05.06

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「日本ではありえないことが、海外では起きる」。そう話すのが、20代半ばからインド、タイといった海外現地法人に10年以上赴任してきた原口です。二輪車や自動車などのメーカーの現地工場に工作機械を販売する営業社員として働く彼は、海外駐在員ならではの得がたい経験を積んできました。中でも原口を大きく成長させたのが、ある「境地」でした。

1,000万円の機械を「300万円に値引きしてくれ!」

これまでの長い海外赴任生活の中で、特に驚いたことは何ですか?

インドの現地企業様との商談に臨んだ際の話です。工作機械を20台以上販売する2億円規模の案件で、なんとか商談をまとめようとプレゼンや根回し、納期調整などを行っていました。するとある日、お客様に会社に呼ばれたので「いよいよか!」と意気込んで行ってみると、なんとそこには当社の競合相手も呼ばれていまして…。2社が別々の部屋を割り当てられ、そこで何が行われたかというと…。

まず競合他社に「向こうは2億円でやると言っているけど、おたくはどうする?」と持ちかけ、今度は当社に「あちらは1億9,000万円と言っているけど、そちらはどうする?」と、その場で値引き合戦が始まったんです(笑)。

日本ではなかなか起こらないことですね…!“値引き合戦”の結果、どちらに軍配が?

当社がありがたく受注いたしました(笑)。いずれにしてもインドではそういう激しい交渉が当たり前で、他にも1,000万円の機械を300万円にしてくれとか、20台のうちの3台は先に受け取りたいから、輸送費はそちら持ちで飛行機を手配して送ってくれとか、無茶な交渉もよくあります。

海外ならではのエピソードですね(笑)。そんなときは、どのように対応するのですか?

日本であれば、1,000万円のものを300万円でと言われたら「さすがにそれは無理です」と断るのが普通でしょう。でもインドは商習慣が全く違うのでむげには断らず、やり取りを重ねる中で「本当は600万円なら買えるのか?」「実は900万円まで出せるのか?」など、相手の本心を探りながら落としどころを見つけてきました。

日本とは商談スタイルがかなり異なるのですね。私生活でもご苦労がありそうですが…ちなみに原口さん、ご結婚は?

はい、しています。海外では妻と2人の娘とくらしています。

奥様には、海外赴任を反対されませんでしたか?

実は私の海外赴任が決まったのが、妻と婚約した直後で…。辞令がおりたときはプロポーズした後だったので、「彼女になんて説明しようか…」と真っ先に思った記憶があります。いざ打ち明けたところ、「もしかして、海外赴任のことを隠してプロポーズしたんじゃないの!?」と疑われました(笑)。でも、そうでないことや、海外赴任で給料が高くなることも説明し、最終的には納得してもらえました。

お給料が高くなることは刺さったかもしれませんね(笑)。それ以外で山善の海外赴任の魅力とは、どんなところにありますか?

海外現地法人は人的資源が限られていることもあり、若くしてチャンスが巡ってくることが大きな魅力です。例えば25歳くらいでお客様のところに単身で行き、5,000〜6,000万円の商談をまとめるという経験は、他ではなかなか得がたいと思います。


どんなときでも、まずは「一報」を入れる

特に印象深かったのは、これもインドでの話なのですが、競合企業が独占的に工作機械を納入していたある日系の大手企業様のバイク製造工場に、交渉して当社も割って入ったことですね。そのときは8,000〜9,000万円の案件でしたが、当社がお取り扱いしている機械メーカー様の若手社員と一緒に綿密に戦略を練り、何度もお客様にプレゼンや日参を重ねた末、若さと勢いも味方して遂に受注が決まったんです。

若手2人で全力でぶつかり、大仕事を成し遂げたんですね。それは嬉しいでしょう!

そうですね。喜びと同時に、その工場は25秒に1台のペースでバイクを組み立てる製造ラインだったので、万が一機械に不具合が起きたらどうしよう…というプレッシャーも大きかったです。仮に10分止まっただけでも、数千万円ものロスが発生してしまいますので…。

そういう面も含め、大きく成長できた案件でした。今でもその工場には、同メーカー様の機械を当社から納入させていただいています。

原口さんは数々の大きな商談を成功させていますが、海外ビジネスにおける山善の強みはどんなところにありますか?

何と言っても大きいのは、機械を納入するだけでなく、備え付けから実際に機械が稼働してものができるまで、そしてアフターサービスまでを一貫してサポートできるところです。これは何十年も前から海外に進出し、エンジニアをはじめとする人財リソースを積み上げてきたからこそできることで、他社がなかなか追随できない部分だと自負しています。

特に最近は、コロナ禍で日本のメーカーのエンジニアがなかなか海外の現場に行けないので、高いエンジニアリング能力を持った当社の海外スタッフの強みがより活かされていると思います。


タイの現地法人にて

タイの現地法人にて

それは大きな優位性ですね。では原口さん個人として、仕事で特にこだわっていることを教えてください。

メールやSNSで連絡が来たときに、どんなときでもできるだけ早く「一報」を入れることです。

たとえ即答できない内容であっても、「見ました。読みました」とまず返信する。そして、「何日までにはお返事できると思います」と返します。上司からも「相手から確認されたら終わりだぞ」と言われてきました。

そういう意味では、インド人のオーナー様などからは試されているとも感じました。とにかく商売相手として認めてもらいたかったので、一生懸命についていった感じです。土日の電話でも必ず出る、メールには即答するなど、信頼いただくためにコツコツやりました。

私の場合、そこを徹底しだしてから、仕事全体が上向いた気がします。些細なことですが、今も一番気をつけていることです。

当たり前のようでありながら、徹底するのは難しくもあります。何か工夫はしていますか?

スマートウォッチを愛用しています。仕事ではメールやLINEのやり取りを頻繁にするので、連絡が来たときにすぐわかるし、荷物を持ちながらでもパッと見られて便利です。これなしでは仕事になりませんね。


「ないこと」より「あること」に目を向ける

長い海外赴任生活で、原口さんが得たものとは何でしょう?

「ないこと」に目を向けるのではなく、「あること」に目を向けることです。海外生活は、言ってみれば「ないこと」だらけなんですよね。日本の商習慣で通用することが通用しない。日本の食習慣もない。言葉が通じない。現地スタッフが思うように働いてくれない…。

でも反対に、見るべき点もたくさんあるんです。例えば、日本とは違う商習慣を経験することで、自分の商談の幅を大きく広げられること。現地の日本人会などを通じて世界中に友達ができ、情報交換ができること。そういう素晴らしい面が“あること”に感謝し、最大限活かすようにしています。現地のスタッフに関しても、「この人はこんな良いところがあるのだから、この役割を担ってもらおう」と考えるようになりました。

海外生活において「ないこと」は、自分ではどうにもならないことが多いです。だからないことを嘆いたり無理に改善するより、「あること」を活用してがんばった方が、良い結果が出ると思います。

足りないことが多い海外赴任生活だからこそ、得られた「境地」と言えそうですね。

そうですね。あと、そういう考え方をしているからかもしれませんが、「物怖じしなくなった」とは思いますね。どういう環境に行ってもなんとかなると思っているし、実際になんとかしてきました。だから、よく知らない物事に対しても、それほど臆せずに向かえるのかなと。インドのトイレにはトイレットペーパーなんてない、じゃあ持ち歩けば良いんだ、みたいな(笑)。


たくましさと柔軟さも身につく「境地」ですね(笑)。そんな原口さんの、この先の展望を教えてください。

2021年4月から、フィリピン現地法人に赴任する予定です。当社の中では、まだ歴史が浅くて小さな現地法人なので、自分が売上を上げるだけでなく、部下である現地スタッフの方々にも売上をつくってもらえる組織を築くことが求められます。それこそあるものに目を向け、愚痴は言わず、コツコツやっていきたいです。


※このインタビューは2021年3月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

原口 明
PROFILE
原口 明

■2007年
新卒入社 国際本部 機械部(現在の機械事業部 海外機械部)
■2010年
インド現地法人 YAMAZEN MACHINERY & TOOLS INDIA PRIVATE LTD.
■2016年
タイ現地法人 YAMAZEN(THAILAND)CO., LTD.
■2020年7月
日本帰国 海外機械部
■2021年4月~
フィリピン現地法人 YAMAZEN MACHINERY & TOOLS PHILIPPINES INC. 赴任予定

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