機工事業部 マーケティング部 副部長

奥山 真吾

Shingo Okuyama

高温多湿な工場にドライな冷風を「クールレボリューション」

2021.12.24

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「生産財に関わる者として、これがあって良かったと、工場や倉庫などで働く作業員の皆様に喜んでいただけるものをつくりたい」。奥山真吾はそう語る。山善のプライベートブランド(PB)商品の一つである「クールレボリューション」は、工場の空調に革命を起こす存在だ。しかし、販売に至るまで数々の困難があった。

工場の作業員の方々に革新的なエアコン装置を届けたい

工場や倉庫などの建物の多くは、費用面や設置環境の難しさから、しっかりとしたエアコン設備を持たない場合が少なくない。高温多湿の日本の夏において、空調のない室内での作業は暑さと湿気で過酷なものである。現場作業員の熱中症対策は、事業管理者にとって重要な課題だ。

工場や倉庫の暑さ対策として、従来から製造現場用の大型扇風機や冷風扇などがあったが、発熱する機械が多い現場では熱い空気を送ってしまう。また、湿度の高い日には冷風扇は冷却効果がほとんどなくなってしまう。それでは作業員を不快にするだけで熱中症対策として現場に薦められない。ドライな冷風を送る装置としてスポットクーラーもあるが、1台で風を送ることができる人数はせいぜい2、3人。多くの作業員に風を送るには多数設置しなければならず、コスト面や設置スペースで無理が出てくる。


「作業現場に大風量のドライな冷風を広く行きわたらせる、もっと革新的なエアコン装置が必要だ」

奥山は、この問題を解決できる革新的な商品を探していた。そんなとき、ある展示会で1台の商品が目に留まる。それは大型の業務用エアコンをベースにした大風量の設置型エアコンだった。

開発元からの鈍い反応。今までにないものをつくる難しさ

その装置を見た奥山は「間違いなく工場で使える」と直感した。しかし同時に、日々の営業活動で感じていた現場のニーズに応えるには、冷却範囲の拡大や排水機能などの付加機能をつけたいと思った。そこで、主力メーカーであるオリオン機械に相談をもちかけた。冷凍機と空調に関する技術を持つオリオン機械なら、山善がイメージする装置ができると考えたからだ。ところが、その反応は予想外だった。

「そのようなタイプの商品は今までない。本当に売れるのか?」

直ぐには開発に応じられないとの回答。

しかし、奥山はあきらめることなく、繰り返し交渉を重ねた。現場から集めた声を元にした需要予測や、装置のコンセプトも含めて説明を重ね、交渉は事業部全体や双方の役員にもおよび、全体の足並みが揃い開発へと走りだしたのは半年後のことだった。


開発そのものも平坦とはいかない。他を上回る十分な機能は必要だが、盛り込み過ぎても製造コストが高くなる。山善としては、企画、仕様をつくるとともに、需要と価格感、装置の価値を総合的に検討した適正な価格を設定しなければならない。しかし、現場の問題に対し、ドライな冷風をできる限りの大風量で送りたいと考える技術側の思いもある。

「我々の現場の知見とメーカー様の技術を上手く集約した形に仕上げていきました」と奥山は開発を振り返る。

1台で大空間にドライな冷風を大風量で送り出す

開発が進み製品として形になった時点で、プロトタイプを10数台つくって現場に投入した。初期の段階では「風の吹き出し位置が高すぎる」「もう少し風量が欲しい」「排熱の処理を考えて欲しい」など、現場からは厳しい声があがった。試作と現場でのテストを重ね、現場の声を反映しながら試行錯誤。最終的に、開発から販売まで2年の歳月をかけることとなる。


クールレボリューションは、1台置けば広範囲の空間にドライな冷風を送ることができる。より広い範囲に冷風を送るため、移動式エアコンではいち早くオートルーバーを搭載した機種も用意した。そのため、作業員ごとに設置する必要はなく、設置にかかるイニシャルコストやスペースの削減、電力使用によるランニングコストの削減も可能だ。排水のためのドレンポンプも先駆けて標準装備化した。さらに排気ダクトを取り付ければ、簡単に室外へ排熱できる。電源には工場で多く使用されている三相200Vを使用し、設置も容易。耐食性の高い塗装により、長寿命化も図られている。

奥山が自信をもって世に出したクールレボリューションは、発売後、工場、倉庫などに導入され、作業員を暑さから解放し、多くの現場で好評を得ることになった。


設置工事不要で空調のない室内や倉庫内でも使用できる。

設置工事不要で空調のない室内や倉庫内でも使用できる。

広がる利用場所。課題を解決する山善のものづくり

クールレボリューションは、大規模商業施設など利用される場所がさらに拡大しつつある。

「特殊な例ですが、災害時に、学校の体育館などの避難場所で使用されました。他にも、猛烈な暑さになる、夏場の物流用大型コンテナ内での作業用に導入された事例もあります」と奥山は話す。


体感温度12℃の超冷風を約50m遠くまで届け、広い空間を冷やす。

体感温度12℃の超冷風を約50m遠くまで届け、広い空間を冷やす。

そして、奥山は今後について語る。「今後はさらに工場空調のスタンダードの一つに数えられるよう様々なソリューションを提供していきます。工場内は意外な熱源があり、障害物も多い。扉の開閉で風の流れが変わることもあり、風が届きにくい場所が生まれやすい。そのため、送風をアシストするブースターファンを開発しました。今後は、多くの工場の片隅に、クールレボリューションのような山善の『生産財』の商品が増えていくでしょう。山善のものづくりに是非ご期待ください」。


※このインタビューは2021年10月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

山善 機工事業部 マーケティング部 副部長 奥山真吾
PROFILE
奥山 真吾

1992年入社。外回り営業の傍ら、クールレボリューションの開発に取り組んだ。2021年10月に機工事業部 マーケティング部 副部長に就任。企画から販売までの全てを行ったPB商品の、開発を主業務とし、複数のプロジェクトが進行する中、企画立案、製造業者選定、価格決定、プロモーション全般など、プロジェクト全体の決定を担っている。

※2023年4月に、機工事業部を「産業ソリューション事業部」と「ツール&エンジニアリング事業部」に分割しました。

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