HILLTOP株式会社 機械開発推進部

吉田 奨様 /Sho Yoshida

機械事業部 マーケティング部

山手 康司 /Kouji Yamate

(写真右から)

アルミ切削メーカー×専門商社が語る “未来のものづくり”対談

2022.10.25

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生産現場のニーズにお応えした、きめ細かなソリューション提供を行う山善の機械事業部は、メーカーとの協業にも積極的だ。今回ご紹介するのは老舗メーカー、HILLTOP株式会社(※1)の開発した自動プログラミングサービス『COMlogiQ』(コムロジック)(※2)の提携販売。日本の「ものづくり」の現場を支えようという志で実現した新しいチャレンジについて、同社・企画開発推進部の吉田奨様と山善・機械事業部でマーケティングの山手康司が語り合った。

技術力×販売力。米国での出会いから始まった新たなWin・Winへの挑戦。

機械事業部ではこれまで日本の「ものづくり」の現場を支えてきました。

山手:町工場に代表される中小メーカーの人手不足はいよいよ深刻化しています。現場を支えてきたベテラン職人の技術は属人化していて、技術継承もうまくいっていません。一方で多品種少量ロット生産によって製品のライフサイクルは短縮し、よりスピード感のある開発・製造が求められるようになりました。

吉田様(以下敬称略):日本の「ものづくり」の現場に厳しい逆風が吹いているのは事実ですね。アルミ切削の試作専業メーカーとして、創業60年を超える当社も多品種少量生産への切り替えを進めており、自動化や技術継承にも取り組んでいるところです。

山手:
そうした課題に対して私たち機械事業部では、工作機械の提案を通じたソリューション提供を行っています。単にハードの提供にとどまらず、ロボットと組み合わせた自動化の提案など、ユーザー側に立ったインテグレーションが特徴です。


吉田:山善さんの提案力の高さは、業界の中では飛び抜けているのではないでしょうか。いち早く時代の変化をキャッチして、他の機械商社に先駆けた提案をしてくれると感じます。私見ですが、家電というコンシューマ製品を手がけていることで時代の風を読む力に長けているのかもしれませんね。

『COMlogiQ』を通じた業務提携について聞かせてください。そもそものきっかけは何でしたか。

吉田:HILLTOPは2014年にアメリカ現地法人を立ち上げました。その準備のために社長が渡米したところ、山善さんの当時の北米支社長と出会って意気投合したことがきっかけと聞いています。

山手:HILLTOPさんは高い技術力を持っていますが、販売ルートは限定的です。その点、山善の販売ネットワークを活用すれば十分な営業活動ができる。「技術力×販売力」というまさにWin・Winの関係が構築できることで、提携の話が進んだのでしょう。

吉田:アメリカに拠点を立ち上げたことからも伺えるように、当社では事業のグローバル展開を考えていました。その点で山善さんの海外拠点に対する期待も大きかったです。そうした将来を見すえて、『COMlogiQ』についても二人三脚で進めていこうということになりました。


山手:2021年春に販売業務提携契約を結び、2022年1月26日から販売スタートとなりました。それに合わせて当社が事務局を務める展示即売会、『どてらい市』にも出展したところ、かなりの反響がありましたね。

吉田:当社では『COMlogiQ』のWebセミナーを開催しましたが、やはり対面での展示会にはかないません。『COMlogiQ』は従来の「ものづくり」の考え方やプロセスを覆すようなところがあるので、Webではなかなか理解していただけない面もあるんです。いまだにFAXと紙の比重が大きい現場の職人さんに対して、Webでデータをアップロードすると説明してもピンとこない方も少なくありません。そうした方々に『COMlogiQ』を操作してみせると、「ここまで進化したのか」と驚かれます。『どてらい市』ならではの発信力を実感しました。

時代の変化を掴む感度を上げて、ユーザーの期待に応えていく。

『COMlogiQ』の特徴、魅力を教えてください。

吉田:『COMlogiQ』は3Dモデルのデータをアップロードするだけで加工プログラムを自動で作成し、ユーザーのプログラミングにかかる時間を削減してくれます。それによってより生産性の求められる業務に人的リソースを投入することが可能になるわけです。



山手:強みは、膨大なデータに裏付けられた信頼性でしょうね。HILLTOPさんでは月間およそ3,000品目の「ものづくり」を手がけられています。そのデータを取り込むことで、経験と知識が必要な5軸加工機にも対応できる加工プログラムの自動作成が可能になったわけです。仮に他社が同様のサービスを内製化しようとしても、難しいでしょうね。


『COMlogiQ』の加工プログラムで制作したアルミパーツ

『COMlogiQ』の加工プログラムで制作したアルミパーツ。人が制作に関わる時間が従来の1/10になることも。

吉田:アメリカで出会ってから『COMlogiQ』のリリースまで長い時間がかかったのは、それだけ開発に苦労したからでした。その間挫折することなく投資を続けて、ようやく販売開始にこぎ着けました。

山手:従量課金制を採用したことも大きな特徴ですね。中小メーカーの導入ハードルが一気に下がりました。

吉田:ユーザーの声をヒアリングする中でわかってきたのが、加工プログラムの必要件数がユーザーによってバラバラだということでした。月に10件もあれば十分というユーザーもいれば、2,000件を超えるユーザーもいます。買い切り型のサービスとすると、割高感を抱いて導入を諦めるユーザーも出てくるでしょう。そこで基本料金を月額15万円とし、10件を超えたら1件あたり1万円という従量課金制にしたわけです。使った分だけ払えばいいということで納得度は高く、導入しやすくなったと思います。

山手:まずは5軸加工機で定評のある、松浦機械製作所様の工作機械とセットでの提供でスタートしました。


『COMlogiQ』が搭載された松浦機械製作所様の工作機械

『COMlogiQ』が搭載された松浦機械製作所様の工作機械(HILLTOP社の工場内)

吉田:もともと同社とは取引があり、お声をかけやすかったということで最初にご協力いただきました。もちろん今後は対応機種を順次増やしていく予定です。具体的にはブラザー工業様と検証作業を進めており、将来的には10機種程度に対応できたらと考えています。こうした取り組みにより、生産現場の人手不足の解消や新製品開発のスピードアップ等、より生産性の高い業務へのシフトに寄与していきます。

自動化への取り組みを広めていくために、どんな施策を考えていますか。

山手:力を入れているのはWebでの発信です。ものづくり支援総合ポータルサイトとして『zenassist+』(ゼナシスト)を立ち上げ、メルマガも月に2回発行しています。背景にはコロナ禍によって営業の実態が変わってきたことがあげられます。ユーザーは今まで以上にリモートでの情報収集に力を入れるようになり、実際に面談に至ったときは既に購買プロセスの6割が終わっているとさえ言われています。Webの情報発信力が営業力そのものを左右する傾向は、今後さらに強くなっていくでしょう。



吉田:JIMTOF(日本国際工作機械見本市)で、ものづくり系Youtuberの「ものづくり太郎」さんの起用も新しい取り組みですね。

山手:ええ。当社ブース内で、『COMlogiQ』についての講演をお願いしました。その様子はものづくり太郎さんのYouTubeチャンネルでも公開される予定です。楽しみですね。

吉田:冒頭でも申し上げたように、山善さんのそうした取り組みは、本当にスピード感があると感じています。商社というといまだに「足で稼いでナンボ」というところが少なくないのに、山善さんは常に一歩先を行くチャレンジをしていますね。その感度の高さは素晴らしいと思います。

日本の「ものづくり」を支えていくという使命感を胸に。

今後の展望について聞かせてください。

山手:引き続き「ものづくり」の現場のために、自動化の提案には力を入れていきます。『COMlogiQ』はその強力なツールの一つです。加工業者の5社に1社は『COMlogiQ』を使っているという所を目指したいですね。

吉田:当たり前のツールとして使っていただけるようになったら嬉しいですね。


山手:もちろんそれだけにとどまらず、多様なメーカーの多様なハード、ソフトを組み合わせ、システムとして提案していきたいと考えています。そんなコーディネート力を高めていきたいですね。

吉田:私が山善さんに期待するのは、マーケティング力です。私たちはユーザーとの接点が少ないため、どんな技術、サービスが求められているか、なかなかつかめません。その点、山善さんの高いアンテナでニーズをキャッチし、アドバイスしていただけたらと思っています。

山手:日本の、そして世界の「ものづくり」を支えていくことが私たちの使命だと思っています。常に現場の声に耳を傾け、時代の流れを汲んだ付加価値の高い提案を行うためには、ヒルトップさんをはじめ、メーカー様との密な連携がより一層重要になってきますね。


※1 HILLTOP株式会社
京都府宇治市に拠点を置く1961年創業のアルミ切削の試作専業メーカー。モットーは「機械ができることは機械に任せ、人は人にしかできない仕事を」。
https://hilltop21.co.jp/

※2 『COMlogiQ』
3Dモデルをアップロードするだけで、5軸の切削加工機を稼働させるのに必要なNCプログラムが自動で作成されるサービス。プログラミングに要する作業時間が大幅に削減され、生産現場の人手不足の解消や新製品開発のスピードアップなどが可能になる。
https://comlogiq.hilltop21.co.jp/


※このインタビューは2022年9月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

山手 康司
PROFILE
山手 康司

機械事業部 マーケティング部 リーダー。2019年にマーケティング部配属後、展示会出展・ポータルサイト立ち上げ・メーカーとの協業など、様々なマーケティング施策の企画立案・実行に携わる。

吉田 奨
PROFILE
吉田 奨

HILLTOP株式会社 機械開発推進部 事業開発
2019年HILLTOP株式会社 に入社後、購買部門の営業担当として協力会社を開拓するほか、CEOの右腕として各種プロジェクトを推進。COMlogiQ事業ではプロジェクトマネージャーを務める。

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