家庭機器事業部 マーケティング室

村井 大輔

Daisuke Murai

販促は消費者とのコミュニケーション。内製化で実現した“刺さる”ツールとは。

2022.10.25

  • facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
  • Linkedinでシェア

家電やインテリア、エクステリア、レジャー用品などの商品を取り扱う山善の家庭機器事業部では、カタログやPOPと呼ばれる店頭に置く広告物等の販促ツール等の内製化を行っている。その数は1年間で販促ツール約4,000個、動画約200本にものぼる。およそ10年前から始まったこの取り組みを通じた消費者や取引先への価値提供について、推進役である村井大輔(家庭機器事業部 マーケティング室 SP担当 リーダー)が振り返った。

返品の理由は取扱説明書にあった

販促ツールの内製化は、お客様の声に耳を傾けることから始まったそうですね。

品質管理部にいたとき「取扱説明書がわかりづらい」と返品されるケースが目に付きました。「ちょっと力を入れて押す」「穴を開けて通す」と書いてあっても、お客様は力の入れ具合や穴の開け加減がわからず、無理したら壊れるんじゃないかと心配になる。「だったらもういいや」と返品されるわけです。ならば動画で補足すれば、と思いつきました。

最初はどんな動画を。

日よけテント『ワンタッチサンシェード』でした。組み立てるのは簡単ですが、畳むのにはちょっとしたコツが必要な商品です。とはいえ取扱説明書でコツまで十分に説明するのは難しい。ならば動画にすれば一目瞭然じゃないかということで、実際に組み立て方・畳み方をスマホで撮影し、ソフトで編集して公開しました。


取扱説明書のわかりづらさを解決した設置収納方法の説明動画。


そうした説明動画をいくつか見た商品部から「販促物にも活用できるのでは」と後押しされ、営業推進部(当時)に異動してから本格的に取り組むようになりました。基本的には素人ですから手探りで1歩ずつ前に進んでいった感じです。頭の中につくりたい動画のイメージはあっても、それを実現する技術はない。そのもどかしさと向き合いながら、街中のポスターやCMなどを参考に一つずつ学んでいきました。 ファイナルカットプロなどのツールも、使いながら独学で覚えましたね。

スペックではなく、魅力を伝える

特に大変だったことは。

気を使ったのは法令関係ですね。例えば証拠もなく「No.1」「超薄型」「業界初」などの表現をすることはNGです。一方でお客様に商品をアピールするためには、競合よりいかに優れているかを説明しなければなりません。

内製化の手応えは次第に大きくなっていったのでは。

お客様に刺さるメッセージが発信できるようになりました。
ものをつくっているメーカーとしては、商品の特徴を伝えるのにスペック中心になりがちです。例えば「ハイテンション亜鉛メッキ鋼板を採用」。確かにセールスポイントではあるんですが、馴染みのないお客様にしてみれば「それは何?」ということになる。「衝撃に強くて傷が付き難い鋼板を使ってます」と表現したほうが心に響くんです。スペックではなくてユーザーベネフィット、つまりお客様にとっての魅力を徹底して伝えるようにしました。
外注のデザイン事務所だと我々がお客様になりますから、「スペックだけでは響かない」と言いづらいでしょう。内製化だからできたと思います。
これは私自身が営業として売場を回っていたときの感覚が大いに活きていると思います。これならお客様に刺さるという肌感覚を大切にすることで、腹落ちのする販促ツールができるようになりました。


コロナ禍に制作した室内換気を促すPOP。時流とニーズを捉えたことで多くの販売店で採用された。


取引先にも新しい価値を提供できているのでは。

家庭機器事業部が扱っている商品は3万点以上あり、そのうち山善ブランドの商品も1万点にのぼります。量販店等の店員の方々もたくさんの商品を取り扱っておられるわけで、商品の機能や特徴を覚えきることは不可能でしょう。
一方で日本人は対面販売を好むので、売場でもきちんと商品の説明をしてもらいたがります。お客様にアピールするポイントが明確に表示された販促ツールがあることは、店員の方の“売りやすさ”にもつながっているのです。実際に使用する方にとってのベネフィットを強調するツールであれば、なおのことでしょう。

Z世代とのコミュニケーションを深化させたい

現在はSNSやTVCMもしていますね。

WebサイトやSNSの動画も自分たちで作っています。動画は最初の数秒が勝負。ここで視聴者をつかまなくては観てもらえないので、出だしで言いたいことをすべて伝えるようにしています。そんな工夫をした耕運機の動画はAmazon様も面白がってくださいました。消費者だけでなく、お取引先様からも評価いただけていると感じています。


商品の魅力を冒頭に詰め込んだ耕運機の販促動画。


今後はどんな展開をお考えですか。

マーケティングデータとの連携を図っていきたいと考えています。例えばECサイトで「山善」と一緒にどんな言葉で検索されているのかを調べれば、消費者が我々に何を期待しているかが見えてきます。それらを反映すればより効果的なメッセージが発信できるはずです。


将来のビジョンについてお聞かせください。

私は、山善のパーパス「ともに、未来を切拓く」の「ともに、」は、我々の業務にあてはめて言えば “Z世代を含めた若者たち”だと考えています。我々がこれから開拓すべきマーケットは、この層だからです。この世代といかにコミュニケーションを深化させていくかがポイントでしょう。

その上でZ世代のユーザーが多いInstagramなどを通して「導光板FAN付きLEDライト」のような“こんな機能が欲しかった”と喜んでいただける商品をご紹介し、我々にできる「お役立ち」を最短距離で伝えていきます。


お客様の潜在ニーズに刺さったFAN付きLEDライト。


もちろん既存のユーザー様や量販店の方など、世の中の人全員に、当社を好きになっていただきたいと思います。山善ブランドへの誇りを胸に、全世代にファンを広げていきたいですね。


村井を中心にチームで運営する担当するInstagramはこちらから!

※このインタビューは2022年8月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

村井 大輔
PROFILE
村井 大輔

家庭機器事業部 マーケティング室 SP担当 リーダー
2002年4月に中途入社。セールスアシスタントを経て2005年から営業担当に。2011年からは品質管理に携わり、2014年から現在に至るまで販売促進業務全般を担当する。現在も各種販促ツール制作、SNS運用、TVCM制作と幅広い業務に携わる。「動画を毎日Instagramに上げているので、いつも今日はどうしようと頭を悩ませています。晩ご飯のおかずを考えるみたいなものです」。

  • facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
  • Linkedinでシェア