物流企画部長

秋山 知彦

Tomohiko Akiyama

受け身の物流から“攻めの物流”へ──。イノベーションを味方に“お役立ち”と“社会貢献”を実現する山善。

2022.11.02

  • facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
  • Linkedinでシェア

多様な課題に直面する物流業界。山善も例外ではなく、物流戦略は今後の成長を支える重要なテーマとの認識から、課題解決に向けた取り組みを行ってきた。2021年に新たな物流拠点「ロジス新東京」を新設するなど、投資も積極的に行っている。山善の物流の現状と今後の展望について、物流企画部の部長・秋山が語った。

“できるところから”のスタンスで

現在、物流業界はさまざまな課題を抱えています。

まずは人手不足ですね。特にECビジネスの伸長によって消費者の手元までのラストワンマイル(お客様へ商品を届ける物流の最後の区間)を担うドライバー不足が鮮明になりました。ドライバーの平均年齢も上昇し、これから多くのドライバーが定年を迎えます。人手不足はますます顕著になるでしょう。


出典:ロジスティクスコンセプト2030(日本ロジスティクスシステム協会)

業務の効率化も大きな課題です。ここ数年で全国各地に倉庫や物流センターの建設が相次ぎ、荷役作業員の数が足りません。自動化・省人化は必須となっています。
さらに環境問題への対応も強く迫られています。すべての上場企業に気候変動リスクの情報開示が求められている中、温室効果ガスの排出量を算定・報告する国際基準GHGプロトコルに基づく対応が必須となっています。

これらの課題に対して、山善ではどのようなソリューションを行っていますか。

取り組むべきテーマは多いのですが、まずはできるところから着実に取り組んでいきたいと考えています。たとえば人手不足・業務効率化については、「ロジス関東」(群馬県伊勢崎市)でロボットソーター「t-Sort」を導入しました。仕分け業務の自動化・効率化を図る仕組みで、これによって仕分け業務に要する人員は12名から5名となり、より生産性の高いコア業務に人員を充てることが可能になりました。ロボット掃除機に似た台車が自動で走り回る様子はなかなか愛らしく、このロボットたちのおかげでこの仕分け作業の生産性はおよそ3倍に向上しました。


ロジス関東で導入したロボットソーター「t-Sort」

ロジス関東で導入したロボットソーター「t-Sort」。仕分け業務の効率化に大きく寄与している。

新たな物流システムの導入も進めています。商社である当社の場合、受注が小口分散化しているため複数の荷物を出荷先ごとに振り分けて取りまとめる「出荷の荷合わせ」作業が必要です。しかし、取寄せ品がある以上、仕入先の膨大な商品コードをすべてマスター登録することは不可能。通り一遍のシステムでは物流管理ができないのです。
こうした商社ならではの課題を踏まえた上で、長年の懸案であったLMS(統合物流管理システム)とWMS(倉庫管理システム)の共通化を進めていきます。具体的には全国の12ヵ所の物流拠点それぞれで独立していたシステムを統一。データの分析・管理の共有を進め、物流コストの削減や業務の効率化、さらには物流DXの推進まで展開していきます。

社会課題の解決に通じる取り組み

グリーン物流についてはいかがでしょうか。

当社では、国土交通省を始めとする3つの省庁から求められた「ホワイト物流 推進運動」にいち早く賛同し、2019年11月に「ホワイト物流自主行動宣言」を提出しました。これを契機に、ロジス関東でのバース入荷予約システムを導入し、トラックによる積み下ろしの待ち時間を大幅に削減することができました。
また、当社では2030年には2020年比でCO2排出量を半減することを宣言しており、物流の現場でも今まで以上にCO2削減に真摯に取り組んでいきたいと考えています。
具体的には東京・九州間の遠距離輸送には鉄道輸送を積極的に活用するとともに、近距離輸送には自社便のEVトラックの活用を検討しています。また物流拠点のLED照明化、省エネ空調の導入、大阪ガスの子会社との協業による再生可能エネルギーの導入を進めるほか、今後、緩衝材をプラスチック製から紙製へ、またパレットについては木製から強化段ボール製へと一部置き換えを進めています。


ナビエース者の特殊加工段ボールを持つ秋山

木製パレットに比する強度をもつナビエース社の特殊加工段ボール。

さらに当社のグループ会社のヤマゼンロジスティクス㈱では「グリーン経営認証」(環境保全の取り組みを行っている運輸事業者を認証する制度)の取得を目指し、独自ブランドとして商標登録を行った「Green Delivery」マークの利用を進めていきたいと考えています。



今後、FSC認証を受けた物流資材を使った荷物にこのマークを表示するなど、当社のこの分野におけるブランディングに結びつけていく考えです。

ドライバーの時間外労働時間が月80時間に制限される「2024年問題」に対しては。

今まで以上に長距離輸送に時間がかかるのは明白です。対策として、物流拠点の最適化と全国的な輸配送網の整備を目的に、物流拠点最適化プロジェクトを立ち上げました。2023年2月にはロードマップを示したいと考えています。

これまでの枠組みにとらわれないチャレンジも始まったと聞きました。

物流の外販、つまり当社の物流機能を“商品”として提供します。専門商社である山善にとって大胆な挑戦といえるでしょう。
具体的には、国内12番目の物流拠点として新設された「ロジス新東京」(埼玉県北本市)が「倉庫業」と「第1種貨物利用運送事業」の免許を取得。これにより当社の仕入先様・販売先様は有償で当社の物流システム、マテハンを利用し、また当社が持つ配送網を利用することで、物流コストの削減や業務の効率化に結びつけることができます。これはまさしく当社のパーパス「ともに、未来を切拓く」の実践で、社会への「お役立ち」につながると考えています。

山善の“強み”を支える物流

お取引先や学生の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

商社の機能とは、社会やお客様が本当に必要とする商品を仕入れて、最適なタイミングで確実にお届けすることです。特に当社はカタログに載っていない商品であっても膨大な仕入れ先の中から見つけ出してお届けするという、きめ細かなサービスを強みとしています。その際に物流の果たす役割は大きく、当社のサービスの下支えとしてはもちろん、社会に与えるインパクトも大きくなります。そのことを自覚し、志高く業務に取り組めるメンバーとともに、「お客様へのお役立ち」と「社会貢献」を同時に実現する未来を切拓いていければと思います。


※このインタビューは2022年9月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

物流企画部長 秋山
PROFILE
秋山 知彦

営業本部 物流企画部長
物流自動化設備の導入やバース予約システムの導入、強化段ボールパレットの導入など、業界の課題に先端テクノロジーを駆使して応える、山善の物流リーダー。

  • facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • LINEでシェア
  • Linkedinでシェア