グリーンリカバリー・ビジネス部長

松田 慎二 /Shinji Matsuda

「カーボンニュートラル実現に向けた中小企業の脱炭素化カンファレンス2023」アフターレポート

2023.03.01

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カーボンニュートラルの流れが加速する中、大企業はもちろんのこと、中小企業にとっても脱炭素化は喫緊の課題となった。2023年2月に開催した「カーボンニュートラル実現に向けた中小企業の脱炭素化カンファレンス2023」を通して、営業本部グリーンリカバリー・ビジネス部長・松田慎二が中小企業に向けて伝えたかったこととは。(2023年2月1日開催)

大企業と中小企業で認識に開き

パリ協定の採択を受け、世界共通の目的として2050年までに温室効果ガスを実質ゼロ、つまりカーボンニュートラルを目指すことで合意されています。日本も非常に真面目に脱炭素に取り組んでおり、グローバル企業を中心に脱炭素の国際イニシアチブ機関に加入している日本企業は多数に及んでいます。また、GX(グリーン・トランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業群が一体となって新たな市場創造に取り組む「GXリーグ基本構想※」も動き出しています。

※GXに積極的に取り組む企業群が、官・学・金と連携して経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場としてGXリーグを設立。同リーグがどのような世界観を目指し、どのような取組を進めていくべきかについての基本的な構想を示す。

一方で、大企業と中小企業では脱炭素化に対する認識にはずいぶん開きがあるのも事実です。ある調査によれば、多くの企業が「脱炭素に取り組まなければ何らかの影響を受ける」と認識しているものの、同時に「具体的に何から取り組めばいいかわからない」といった声が大多数を占めます。山善が独自に行った調査でも、カーボンニュートラルへの認識や取り組みについて中小企業は遅れており、人的リソース、情報・知識リソースが不足しているという課題も浮かび上がっています。


大企業にとっては、脱炭素に真剣に取り組んでいない企業がサプライチェーンの中にあることは受け入れがたいでしょう。実際にステークホルダーや発注元からの圧力は日に日に高まっており、たとえば急激にEV化が進む自動車業界では既にサプライヤーの選別が始まっているようです。
中小企業にとっては脱炭素化に取り組むことはもはや必然であり、後れを取ることは大企業との取引の打ち切りにつながりかねません。こうした状況に置かれている中小企業への支援が今後の重要なテーマになってくると考えられます。

山善のグリーン成長戦略

昨年、東証のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴い、プライム企業には気候変動リスクの開示が求められるようになりました。当社も既にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同して情報開示を行っており、2050年までにカーボンニュートラルに向けて取り組みを進めています。


ポイントとなるのは流通商社という事業特性です。すなわちScope1、2といった当社の直接的な排出量は軽微であるのに対し、Scope3にあたる製品仕入れと製品使用による温室効果ガスの排出が大半であるということです。

そこで山善では、2030年までに排出量50%削減、2050年には実質ゼロを達成するために製品仕入れと製品使用による排出を削減するため、グリーン成長戦略を打ち出しました。


戦略フィールドは「開発ビジネス」「販促企画」「ブランディング」の3つです。
「開発ビジネス」は再生可能エネルギーの新たな選択肢として注目されているPPAモデル事業。「販促企画」では2008年より「グリーボールプロジェクト」を展開しています。


PPAモデル事業では大阪ガスの子会社であるDaigasエナジー株式会社との戦略的なアライアンスのもとで『DayZpower』を設立。再エネ供給から施工、維持管理までワンストップで提供できるPPAモデルを構築しました。

一方「グリーンボールプロジェクト」は、環境優良機器の普及によって工場や家庭などで排出される温室効果ガスを削減させ、地球環境に貢献することを目的としています。2008年のスタート時点でScope3と呼ばれる消費者やユーザーの製品仕様に伴う排出量削減に寄与する取り組みであり、非常に先進的なものであったと自負しています。


「グリーンボールプロジェクト」では、温室効果ガス削減貢献について当社独自のGBPプロトコルに基づいて算出しています。温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際的な基準であるGHGプロトコルと併算することで、温室効果ガス削減効果の“見える化”を促すことができるわけです。調査によれば中小企業の温室効果ガス削減の“見える化”に対する要望は非常に多く、その支援ができるのではと考えています。

“見える化”を通じた支援

温室効果ガス削減の取り組みにおいて重要なのが、排出量を“見える化”することです。
この“見える化”のツールとして、山善では「GBPアプリ」を開発しました。



GHGプロトコルとGBPプロトコルを併算して集計するというツールです。これを山善では、「グリーンボールプロジェクト」にご参画いただいている企業様(販売店様)に無償で提供しています。

提供先の企業様からは「各事業拠点で電気代やガソリン代など会計的に処理していた数字をこのアプリに打ち込めば、排出量として算出され、Scope1、2、3と振り分けることができる」、「これをしっかりやれば、取引先や金融機関に環境報告書として提出できるんじゃないか」と高い評価もいただいています。

仕入先や得意先といったサプライチェーンの企業と協働で、中小企業の脱炭素化への取り組みを支援することは、流通商社である山善だからこそ可能であると感じています。これからもその社会的使命を果たすべく、支援を続けていきたいと考えています。

松田 慎二
PROFILE
松田 慎二

株式会社山善 執行役員/営業本部 グリーンリカバリー・ビジネス部長
(エネルギー・ソリューション事業、建設監理、物流企画管掌)

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