東京管理部 法務審査課

三嶋 康平

Kohei Mishima

一年目の試練が成長のきっかけに 「管理部はビジネスの幹」という誇り

2021.12.24

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「管理部は楽しい」。元々は営業志望だった三嶋康平だが、今、その言葉に迷いはない。彼の考えを転換させたのは、入社1年目では考えられないような一大ミッションをその手でやり遂げたことだ。三嶋を大きく成長させたその経験とは。

一年目の試練は貸倒金の回収。OJTの愛の鞭で踏み出した大きな一歩

入社後、半年の研修期間を終えた三嶋は大きな問題に直面する。取引先の倒産である。

法務審査課に所属する三嶋の仕事は、取引先と交わす契約書のチェックや取引先の財務状況などの信用力を分析・判定する与信管理だ。取引先が倒産した場合は、営業部門と共にすみやかに売上金を回収し、山善の損失をできる限り抑えなければならない。

「何から手をつければいいんだ」。研修を終えたばかりの三嶋には荷が重かった。先輩である戸田健一から手ほどきを受けながら、手順を一つひとつ進めていくが、物事はそううまくはいかない。連帯保証人に支払い能力のないことが判明したのである。そこで、連帯保証人が所有する不動産の仮差押え(※1)をすることにした。そのためには裁判所に資料を提出し、申立てを行わなければならない。


申立てが棄却されれば仮差押えができず、貸倒金(※2)の低減が望めない。非常に重要な局面だ。プレッシャーをいやというほど感じながら、三嶋は連日、契約書の写しや山善の主張を記した説明資料など、手続きに必要な資料を作成した。
申立ての日、三嶋は戸田と共に裁判所に向かった。裁判官への資料説明のため、小部屋に通される。その際に裁判官から一言、「説明はお一人でお願いします」。目を見合わせる三嶋と戸田だったが、戸田は三嶋の背中を押す。「回答が難しかったら後でフォローするから。行って来い」。「まさか、入社一年目の自分が一人で?!」三嶋は驚いて戸田の顔を見つめたが、戸田の表情は真剣そのものだ。新人に一人でやらせる仕事なのか、という気持ちはあった。しかし、裏を返せば大きな裁量をもって仕事をさせてもらえるということだ。それに、戸田はきっと自分を信じて任せてくれているのだろうと感じた。事実、後に戸田はこう語っている。「担当者は三嶋であり、誰よりもこの案件を把握していた。三嶋ならできると考えて任せた」。行くしかない。戸田の視線を背中に受けながら、三嶋は資料を手に小部屋に入って行った。

申立てはうまく行った。途中、裁判所からの質問の回答につまることもあったが、電話で本社に確認をして態勢を立て直し、事なきを得た。差押えた不動産は競売にかかり、売却額の一部が配当され、貸倒金を想定以上に軽減することができた。支店の営業社員からも感謝された。一年目にして責任のある大役を果たしたことは、三嶋にとって大きな自信となった。


OJT(※3)の戸田(右)と三嶋は、今も同じ部署で働く仲良しコンビだ。

OJT(※3)の戸田(右)と三嶋は、今も同じ部署で働く仲良しコンビだ。

問題をトータルで解決。兼務で可能性が広がった

入社9年目。三嶋は、法務審査に加えて知財管理の仕事を兼務することになった。任された主な仕事は、家庭機器事業部が販売する自社商品の侵害調査と権利化だ。入社以来、法務を担当してきた三嶋にとっては未知の分野である。不安はあったが、業務をこなしながら手探りの中で覚えていくしかなかった。


そんな折、他社が山善の権利侵害に当たる商品を販売していたことが発覚する。特許事務所の弁理士とも協議をした上で当該の企業に警告を行い、和解という形でこの係争案件は解決することになった。本来であれば、専門の部署に契約書を作成してもらうのだが、契約書の作成は長年法務審査に携わってきた三嶋の強みでもある。自分でできそうだ。

三嶋は、条件を盛り込んだ契約書を作成し、相手との和解を完結させた。初めて携わる係争案件を、最初から最後まで自分の手で解決できたことが、仕事への充足感をいっそう高めた。兼務だからこそ見えた新しい景色だった。「これからは商品の戦略的な権利化も手がけ、独占的な販売で山善のメリットを最大化したい」。柔和な表情とは裏腹に、三嶋は攻めの姿勢を見せる。


今後も部門の枠を超えて、様々な部署を渡り歩きたい

実は入社当初、三嶋は営業志望だった。ところが、配属されたのは管理部の法務審査。当初は悩むことも多かった。とくに与信管理では、取引先の信用力に問題があれば、支店長や部長という立場の営業社員に対して電話やメールで「取引量を減らした方が良い」「売上金の回収方法を工夫した方が良い」とブレーキをかけなければいけない。時には営業社員と衝突することもある。最後には営業社員も事情を理解して協力してくれるものの、三嶋は自らの仕事を「前向きな仕事ではない」と感じていた。

しかし、様々な案件を経験して視野が広がった今、「法務審査も知財管理も取引をする上では欠かせない。管理部はいわば、ビジネスの幹。それを自分は担っている」と考えている。業務が幅広く、多くの事業部と関わる機会がある管理部で、山善全体を見渡し、幅広い仕事を任される立場にいることに誇りを感じている。


これからは、「部門の枠を超えて、いろんな部署を渡り歩いてみたい」と話す。各部署の立場を知れば、管理部として関わる際にもっと説得力のある対応ができるはず。さらに、今までとは違う環境に身を置いて、培ってきた自らの経験を活かすことは、その部の活性化にもつながるのではないか。そう考える三嶋の目は、太い幹になって山善を支えようとする力強さに満ちている。

※1 仮差押え…確実に売上金を回収するために、裁判で判決が出る前にあらかじめ買い主の財産を確保しておくこと。
※2 貸倒金…取引先の経営悪化や倒産などにより、回収できなくなった損失金額のこと。
※3 OJT(On the Job Training)…職場の上司・先輩が、部下・後輩に対して、現場の実務を通じて仕事を教える教育方法のこと。

※このインタビューは2021年11月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

経営管理本部 東京管理部 法務審査課 三嶋康平
PROFILE
三嶋 康平

神奈川県出身。2012年に新卒入社。経営管理本部 東京管理部 法務審査課に配属され、法令対応や契約業務、与信管理等を担当する。2019年にはPL・知的財産管理室兼務となり、山善プライベートブランド(PB)商品の侵害調査や権利化のサポート、係争案件への対応も担当。各事業部と連携をとりながら全社を見渡す広い視野で山善を支えている。

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